前の記事「Blenderのインストールと日本語化」を終えたら、Blenderで実際に何かを作ってみましょう。この記事では、コーヒーカップを1つ作りながら、視点操作からモディファイアまでの基本操作を覚えられます。
操作を間違えても大丈夫です。Blenderの「元に戻す」機能を使えば、何度でもやり直せます。気負わず、実際に手を動かしながら覚えていきましょう。
01まずは視点操作に慣れる
モデリングを始める前に、3D空間での視点操作を覚えましょう。
- 視点を回転:マウスの中央ボタン(ホイール)を押しながらドラッグ
- 視点を平行移動:Shift+中央ボタンでドラッグ
- ズームイン・ズームアウト:ホイールを回す
視点を動かしているうちに、画面がぐちゃぐちゃになってしまうことがあります。そんなときは、テンキー1を押してみてください。正面からの見やすい視点に、いつでも戻れます。
- テンキー1:正面から見る
- テンキー3:右側面から見る
- テンキー7:真上から見る
視点がどうなっても、テンキー1を押せばいつでも最初の見やすい状態に戻せます。安心して視点をぐるぐる動かしてみてください。
視点が思うように動かない・変な動きをする場合は、補足コラム「操作で詰まったときの逆引き」へ
022つのモード:オブジェクトモードと編集モード
Blenderには、たくさんのモードがありますが、モデリングで使うのは主に次の2つです。
- オブジェクトモード:立方体や円柱など、物体を「ひとかたまり」として選んで動かすモード
- 編集モード:物体を作っている頂点・辺・面を1つずつ編集して、「形そのもの」を変えるモード
この2つは、キーボードのTabで切り替えられます。
「頂点や辺を動かしたいのに、物体全体が動いてしまう」というときは、たいてい編集モードに入っていないのが原因です。まずTabを押して、編集モードに切り替わっているか確認してみてください。
03覚えるのは3つだけ:移動・回転・拡大縮小
物体の形を変える基本操作は、次の3つのキーだけです。
- G(Grab):移動
- R(Rotate):回転
- S(Scale):拡大縮小
これだけだと、思った方向とは違う向きに動いてしまうことがあります。そこで、キーを押した後にX・Y・Zのいずれかを押すと、その軸だけに動きを限定できます。
- G→Z:上下(縦方向)だけに移動
- S→X:横方向だけに拡大縮小(ペチャンコにせず、横だけ伸ばす)
- R→Z:上から見た向きだけ回転
「縮めたら全体が小さくなってしまった」というときは、この軸指定を忘れているのが原因です。何をするときも「G・R・Sのあとに軸を1つ押す」を意識してみてください。
このG・R・Sは、物体全体を動かすときも、この後の編集モードで頂点・辺・面を動かすときも、同じように使えます。
04頂点・辺・面を選んで、形を変える
編集モードに入ったら、頂点・辺・面のどれを選ぶかを切り替えられます。キーボード上段(テンキーではない方)の数字キーを使います。
形を変えるための代表的な操作は次の3つです。
- 押し出し(E):選択した面を引き伸ばして、新しい形を作る
- ループカット(Ctrl+R):モデルに一周する切れ目を入れて、頂点や辺を増やす
- ベベル(Ctrl+B):角を丸めたり、面取りしたりする
それぞれの操作をした直後は、画面左下に小さなパネルが表示されます。ここをクリックすると、本数や角度などの数値を後から調整できます。一度で思い通りにならなくても、ここで微調整すれば大丈夫です。
押し出し(E)を試していると、思わぬ方向にマウスが動いて、形がグチャグチャになってしまうことがあります。そんなときは焦らず、Ctrl+Zを押してみてください。1回押すごとに1つ前の状態に戻るので、何度でも押して大丈夫です。
操作を間違えたときは、Ctrl+Zで何度でも元に戻せます。「これ、失敗したかも」と思ったら、まずCtrl+Zを押す。それだけ覚えておけば十分です。
05形を仕上げるモディファイア
モディファイアは、元の形を壊さずに加工を加える機能です。「一度加えても、後から数値を変えたり外したりできる」という安心感があります。まず覚えたいのは、次の2つです。
- ミラーモディファイア:形の半分だけ作れば、もう半分を自動で左右対称に作ってくれる
追加前
追加後 - サブディビジョンサーフェス:カクカクした面を、なめらかな曲面に変えてくれる
適用前
適用後
モディファイアは、画面右側のプロパティパネルにある、レンチのアイコン(モディファイアプロパティ)から追加します。
モディファイアの効果が反映されないときの対処は、補足コラム「操作で詰まったときの逆引き」へ
06実演:コーヒーカップを作ってみよう
ここまでの操作を使って、実際にコーヒーカップを1つ作ってみましょう。
カップ本体を作る
- 最初にある立方体は使わないので、選択した状態でXを押して削除し、Shift+Aから「メッシュ」→「円柱」を追加します
- 編集モードに入り、上面を選択します(面選択モード=3)
- 面の差し込み(I)で、上面の内側に少し小さい面を作ります
- その面を選んだまま押し出し(E)でカップの内側に向かって押し込み、内側の空間を作ります
- 辺選択モード(2)に切り替え、カップの縁(外側と内側の境目の辺)をAlt(Macではoption)+クリックでループ選択してから、ベベル(Ctrl+B)で少しだけ丸めます
取っ手を作る
- Tabでオブジェクトモードに戻り、Shift+Aから「メッシュ」→「トーラス」(ドーナツ型)を追加します
- Sで全体のサイズを小さくし、Rで向きを回転させて、取っ手らしい形に整えます
- 編集モードに入り、カップに埋め込む側の半分を選択して削除し(X→「頂点」)、半円状にします
カップ本体と重なっていて選択しにくいときは、トーラスを選択した状態で/を押してみてください。選んだオブジェクトだけを表示する「ローカルビュー」に切り替わり、作業しやすくなります。終わったら、もう一度/を押せば元の表示に戻ります。
- Tabでオブジェクトモードに戻り、G(軸指定つき)で、カップの側面にぴったりつくよう移動させます
カップと取っ手をくっつける
取っ手を選んでから、Shiftを押しながらカップ本体も選び(最後にカップ本体をクリックするのがポイントです)、Ctrl+Jで結合します。
結合すると、2つのオブジェクトの原点(基準点)は、最後に選んだ方(アクティブなオブジェクト)の位置に揃います。結合した後に位置がずれて感じたら、補足コラム「操作で詰まったときの逆引き」の「原点がずれている」を見てみてください。
ソーサーを作る
- Shift+Aから「メッシュ」→「円柱」を追加します
- S→Zで薄くつぶし、Sで横に広げて、薄い円盤状にします
- Gでカップの下に配置します
ソーサーはカップとは結合せず、別のオブジェクトのままにしておきます。テーブルに置いたときに、カップだけを別に動かせるようにするためです。
全体を滑らかにする
最後に、カップ本体とソーサーにサブディビジョンサーフェスモディファイアを追加して、全体をなめらかにします。ただし、何も準備せずにモディファイアを追加するだけだと、角が丸まりすぎて形が崩れてしまいます。
そこで、なめらかにしたくない場所の近くに、あらかじめループカットで辺を増やしておきます。辺が密になっている場所は、サブディビジョンサーフェスの効果が弱くなり、形が保たれやすくなるためです。
カップの上端はすでにベベルで面取りしているので、そこにはループカットは不要です。代わりに、次の2箇所に入れます。
- カップ本体の下部:Ctrl+Rでループカットを2本追加
- カップ内側の円柱(内壁):同じくCtrl+Rでループカットを2本追加
ソーサーにも同じ理由で下準備が必要ですが、円柱の側面ではなく上下の面が対象なので、面の差し込み(I)を使います。上面・下面それぞれにIで一回り小さい面を作っておくと、サブディビジョンサーフェスをかけたときに縁がギザギザにならずに済みます。
準備ができたら、Tabでオブジェクトモードに戻り、カップ本体とソーサーそれぞれにサブディビジョンサーフェスモディファイアを追加します。
07次にやること
これで、Blenderの基本操作を使ってコーヒーカップを1つ作れるようになりました。
覚えることが多かったと感じたら、結局は次の4つだけ繰り返せば形は作れます。
- 視点操作(テンキー1でいつでも戻れる)
- G・R・S(軸指定つき)
- オブジェクトモードと編集モードの切り替え(Tab)
- 押し出し(E)
操作の正式な解説は、Blender公式マニュアル(日本語版)にまとまっています。この記事で基本をつかんだら、困ったときの辞書として活用してください。
次は、作った形に色や質感をつける「マテリアル」の記事に進みましょう。同じカップを使って、陶器らしい質感や、木のテーブルの質感を再現していきます。
make.aimkでは、今後もBlenderの各工程を1つずつ、実際に手を動かしながら学べる記事を公開していく予定です。
08よくある質問
Q. 立方体を消してしまいました。元に戻せますか?
A. 戻せます。Ctrl+Zを押すと、1つ前の状態に戻ります。何度でも押せるので、間違えたと思ったらまず試してください。
Q. オブジェクトが見えなくなりました。削除されましたか?
A. 削除ではなく、非表示になっている可能性があります。Alt+Hを押すと、非表示にしたオブジェクトがすべて再表示されます(詳しくは補足コラム「操作で詰まったときの逆引き」へ)。
Q. ショートカットキーを押しても反応しません
A. 日本語入力(IME)がオンになっていると、G・R・S・Eなどの1文字ショートカットが反応しないことがあります。日本語入力をオフにしてから試してみてください。
Q. モデリングには「正しいやり方」がありますか?
A. いくつかの手法がありますが、基礎として最初に覚えるなら、この記事で紹介した「立方体や円柱から組み立てる方法(ボックスモデリング)」で十分です。他の手法との違いは補足コラム「モデリングの手法にはどんな種類があるか」で紹介しています。
Q. Blenderのバージョンが違うと、操作も変わりますか?
A. 視点操作・G/R/S・Tabでのモード切替など、この記事で紹介した基本操作は、バージョンが変わっても大きくは変わりません。安心して試してください。
Q. 完成したモデルを画像として保存するには?
A. 「レンダリング」という工程で画像に書き出せます。詳しくは今後公開するレンダリングの記事で解説します。
Q. 保存したら、日本語設定やレイアウトが変わっていました
A. 日本語設定が英語に戻ってしまう場合は、Blenderのインストールと日本語化の記事の手順を再度確認してみてください。
補足コラム
操作で詰まったときの逆引き
視点が思うように動かない・ズームや平行移動が変な動きをする
視点操作の方法は、マウスかトラックパッドかによって少し異なります。基本は「マウスの中央ボタン(ホイール)を押しながらのドラッグ」で回転しますが、Macのトラックパッドや Magic Mouse では、指でなぞるだけで回転できます(Magic Mouse は本体前面の中央あたりがトラックパッドのようになっていて、そこをなぞると視点が回転します)。平行移動もShiftを押しながら同じようになぞれば操作できます。また、ズームはホイールを回す以外にCtrl+中央ボタンのドラッグでも操作できるので、ホイールが使いにくい環境では覚えておくと便利です。
テンキー1・3・7が使えない(ノートPCやMacでテンキーが無い)
ノートパソコンやMacBookなど、物理的なテンキー(数字キーパッド)が無いキーボードでは、テンキー1のような操作がそのままでは使えません。Blenderの環境設定(Preferences)の「入力」タブにある「テンキーを模倣」を有効にすると、キーボード上段の数字キーがテンキーの代わりとして使えるようになります。
オブジェクトが選択できない(クリックしてもオレンジ色にならない)
選択したいオブジェクトが、別のオブジェクトの後ろに隠れていることがあります。視点を少し回転させて、選びたいオブジェクトが見えるようにしてからクリックしてみてください。
画面が真っ暗・真っ白になった
表示切り替えのキーを誤って押してしまったことが原因の場合があります。ズームしすぎて物体の内側に入り込んでいることもあります。テンキー1を押して正面表示に戻すと、多くの場合は元の見え方に戻ります。
ツールバー・サイドバーが消えた
ツールバー(画面左端の縦長のアイコン列)はT、サイドバー(画面右端に出る詳細パネル)はNで、それぞれ表示・非表示を切り替えられます。消えてしまった場合は、同じキーをもう一度押してみてください。
原点がずれている・画面中心に表示したい
「原点」とは、オブジェクトの移動・回転・拡大縮小の基準になる点です。インポートしたオブジェクトなどで、見た目の位置と原点の位置がずれていることがあります。
原点の位置は変えず、画面の中心に表示したい場合:オブジェクトを選択した状態でShift+Cを押すと、視点全体がリセットされ、すべてのオブジェクトが画面に収まるように表示されます。選んだオブジェクトだけを中心に表示したい場合は、テンキー.(ピリオド)を押します(メニューからは「ビュー」→「視点を揃える」→「選択部分を表示」でも同じ操作ができます)。
原点の位置そのものを、オブジェクトの中心に合わせ直したい場合:上部メニューの「オブジェクト」→「原点を設定」→「原点をジオメトリへ移動」を選びます。
原点の扱いは少し込み入ったテーマです。うまくいかない場合は、一度オブジェクトを削除して作り直す方が早いこともあります。
個別トランスフォームをリセットしたい
移動・回転・拡大縮小をいろいろ試して、どこが元の位置か分からなくなってしまった場合、次のキーでそれぞれ元の値(移動なし・回転なし・拡大縮小なし)に戻せます。
- Alt+G:移動をリセット
- Alt+R:回転をリセット
- Alt+S:拡大縮小をリセット
オブジェクトを結合したい
2つ以上のオブジェクトを1つにまとめたい場合は、まとめたいオブジェクトをすべて選択し(最後に選んだオブジェクトが基準になります)、Ctrl+Jを押します。
モディファイアの効果が反映されない
モディファイア(特にソリッド化)の効果が想定と違う形になる場合、オブジェクトの拡大縮小(スケール)の数値が「1」以外になっていることが原因の場合があります。Ctrl+Aから「全トランスフォーム」を選ぶと、見た目を変えずにスケールを「1」にリセットできます。
モデリングの手法にはどんな種類があるか
この記事では「立方体や円柱から組み立てる方法(ボックスモデリング)」を紹介しましたが、他にも手法があります。
- ボックスモデリング(この記事で採用):立方体や円柱などの基本形状を、押し出しやループカットで変形させながら形を作る方法。狙った形をコントロールしやすく、基礎として最初に覚えるのに向いています
- 下絵トレース:参考にしたい画像を背景に置き、その輪郭を頂点でなぞって面を張っていく方法。人体やキャラクターなど、複雑な曲線を持つ形に向いています
- スカルプト:粘土をこねるような感覚で、ブラシで表面を直感的に変形させる方法。有機的な形(生き物・地形など)に向いています
どの手法が「正解」というわけではなく、作りたいものによって向き不向きがあります。まずはボックスモデリングで基本操作を身につければ、他の手法に進んだときも土台として役立ちます。
このほか、編集モードには押し出し・ループカット・ベベル以外にも、面の差し込み(I)やナイフツール(K)といった操作があります。慣れてきたら試してみてください。